マウスピース矯正にはさまざまな種類がありますが、「アソアライナー」という矯正方法をご存じの方もいることでしょう。アソアライナーは、透明で目立ちにくく、前歯や部分矯正にも対応できる日本発のマウスピース矯正装置です。3つの硬さの異なるマウスピースを使うなど、独自の特徴があります。
しかし、「どんな歯並びに向いているの?」「ほかのマウスピース矯正と何が違う?」「費用や治療期間はどれくらい?」といった疑問や不安を持つ方も少なくありません。また、「本当に痛みは少ないのか」「装着時間や自己管理は大丈夫?」など、治療を始める前に気になるポイントがある方も多いでしょう。
そこで今回は、アソアライナーの特徴やほかの矯正装置との違い、メリット・デメリット、費用や治療期間、そして後悔しないためのポイントまでを分かりやすく解説します。
アソアライナーとは
アソアライナー(AsoAligner)は、日本のアソインターナショナル社が開発した、透明なマウスピース型の矯正装置です。装着しても目立ちにくく、取り外しも可能なため、食事や歯磨きも普段どおりに行うことができます。
日本国内の歯科技工所で一人ひとりの歯型に合わせて作製されており、品質管理が徹底されているのも特徴です。主に軽度から中等度の歯並びの乱れに対応しやすく、比較的始めやすい費用帯も魅力とされています。
アソアライナーは公的健康保険適用外の自費診療です。治療内容や期間、適応範囲については、歯科医師の診断が必要です。
アソアライナーとインビザラインとの違い
マウスピース矯正はさまざまなブランドがありますが、その中でもインビザラインは世界的に普及しており、幅広い症例に対応できることが特徴です。一方、アソアライナーは日本国内で開発・製造された矯正装置で、適応範囲や治療スタイルが異なります。ここでは、両者の主な違いについて解説します。
マウスピースの製造国
アソアライナーは日本国内の歯科技工所で製造されています。そのため、歯型採取からマウスピース完成までの納期が短い傾向があります。通常、型取りから10日ほどでマウスピースが製作され、治療をスタートできます。
一方、インビザラインはアメリカで設計・製造されており、マウスピースが届くまで2~3週間、場合によってはそれ以上かかることもあります。
また、国内製造のアソアライナーは、万が一トラブルが発生した際の対応が比較的スムーズなのも特徴です。
適応症例
アソアライナーは、軽度から中等度の歯列不正、例えば前歯の隙間や部分的なデコボコなどに対応しています。矯正後の後戻りや隙間を閉じるなど、比較的軽度な症例が得意分野です。
一方で、インビザラインは全体矯正や抜歯が必要なケース、奥歯を含む複雑な症例まで幅広く対応可能です。
ただし、どちらの装置も適応範囲には限界があります。マウスピース矯正では治療が難しい場合は、ワイヤー矯正の検討も必要です。治療前には必ず歯科医師の診断を受け、慎重に決定しましょう。
歯型採取
治療中の歯型採取の頻度にも違いがあります。アソアライナーは、治療の進行に合わせて1カ月ごとなど定期的に歯型を採取し、その都度マウスピースを作製します。これにより、歯の動きに合わせて細やかな調整が可能です。
一方、インビザラインは初回の歯型採取で治療計画のゴールまで複数のマウスピースを一括作製するスタイルです。そのため、通院ごとの型取りは基本的に不要ですが、途中で計画変更が必要な場合は再度歯型採取を行うこともあります。
マウスピースのタイプ
マウスピースの形状や装着感にはかなりの違いがあります。
アソアライナーは、ソフト・ミディアム・ハードと厚みや硬さの異なる3種類のマウスピースを順番に使用するシステムを採用しています。また、歯茎までしっかり覆うデザインで、保持力が高い反面、装着時にやや違和感を覚えることもあります。
一方、インビザラインは基本的に単一素材・一律の厚み(0.05mm)のマウスピースを段階的に交換して使用します。歯の部分のみを覆う形状で、装着時の違和感が少なく、快適さが特徴です。
費用と治療期間
費用や治療期間も異なります。
アソアライナーは10万~40万円程度、治療期間の目安は4カ月~1年半と比較的始めやすい範囲に収まることが多いです。アソアライナーは軽度~中等度の歯列不正改善を対象としています。そのため、マウスピースの必要枚数が比較的少なくて済み、費用を抑えやすく治療期間も短めな傾向があります。
一方、インビザラインは全体矯正や複雑な症例に対応できる分、費用は20万~100万円程度、治療期間も3カ月~3年と幅広くなっています。
ただし、アソアライナーもインビザラインも症例やクリニックによって費用や治療期間が異なるため、詳細は事前に相談することが大切です。
アソアライナーの特徴
アソアライナーは、国内開発・製造のマウスピース型矯正装置として、以下のような特徴があります。
透明で目立ちにくいマウスピース矯正
アソアライナーは透明な樹脂素材で作られており、装着していても目立ちにくいのが大きな特徴です。金属製のワイヤーやブラケットを使わないため、矯正中であることが周囲に気づかれにくく、見た目が気になる方にも選ばれています。日常生活の中で自然に過ごしやすいというメリットがあります。
硬さの異なるマウスピースを使い分ける
アソアライナーでは、厚みや硬さが異なる3種類(ソフト・ミディアム・ハード)のマウスピースを段階的に使い分けて歯を動かします。段階ごとに力を調整しながら矯正を進めることで、矯正中の痛みや違和感を軽減できます。つまりアソアライナーは、歯への負担を和らげつつ、効率的に歯を動かすマウスピース矯正というわけです。
自分にあったサイクルで発注できる
従来のアソアライナーは、1ステップごとに歯型を採ってマウスピースを作る方式でした。そのため、歯の動きに合わせて細やかな調整ができる一方で、手間がかかるという問題点がありました。
しかし現在は、「アソアライナーデジタル」により、1回の歯型採取で複数ステップ分のマウスピースをまとめて発注できるようになっています。1ステップ・3ステップ・5ステップの中から自分に合ったサイクルを選べるため、通院回数やライフスタイルに合わせた治療計画が立てやすい点が魅力です。
ホワイトニングに対応
アソアライナーは取り外しが可能なマウスピース型矯正装置のため、ホームホワイトニングのジェルを使ったセルフケアがしやすいことも特徴です。また、歯科医院でマウスピースを外してオフィスホワイトニングを受けることもできます。ワイヤー矯正では難しいホワイトニングも、アソアライナーなら両立しやすい環境が整っています。
専用ケアグッズでお手入れしやすい
アソアライナーには専用の洗浄剤や、持ち運びできるウェットシートタイプのクリーナーなど、マウスピース専用のケアグッズがそろっています。毎日清潔に保つためのサポート体制も整っており、衛生面を重視したい方にも安心してご利用いただけます。
アソアライナーのメリット
アソアライナーの代表的なメリットについて解説します。
装置が目立ちにくい
アソアライナーは透明なマウスピース型の矯正装置を使用するため、装着していても周囲から気づかれにくいのがメリットです。見た目を重視したい方や、仕事・学校などで矯正治療を目立たせたくない方に向いているといえるでしょう。
取り外しできて普段どおりに食事や歯磨きできる
アソアライナーはご自身で簡単に取り外しできる点もメリットです。食事の際や歯磨きのときはマウスピースを外せるため、普段どおりの生活スタイルを維持でき、食べ物の制限もありません。装置が邪魔にならずしっかり歯磨きできますので、口腔内を清潔に保ちやすく、虫歯・歯周病予防もしやすいです。
痛みや違和感が少ない
アソアライナーは、装着中の痛みや違和感が少ないのもメリットといえます。
アソアライナーは、段階ごとに厚みや硬さの異なる3種類(ソフト・ミディアム・ハード)のマウスピースを使い分けるマウスピース矯正です。そのため、歯にかかる負担が分散されやすく、ワイヤー矯正と比べて痛みや違和感を軽減しやすくなっています。矯正歯科治療中のストレスをできるだけ抑えたい方に向いています。
細かく調整できる
アソアライナーでは、治療の進行やライフスタイルに合わせてマウスピースを発注できる「アソアライナーデジタル」が導入されています。1回の歯型採取で1ステップ・3ステップ・5ステップなど複数分をまとめて作製できるため、細やかな調整や、通院頻度の調整がしやすい点も魅力です。
費用・期間が抑えやすい
アソアライナーは、費用・治療期間を比較的抑えやすい点もメリットです。
例えば、インビザラインなどで全体矯正をする場合、歯列全体の矯正となるため費用や治療期間が長くなりがちです。一方、アソアライナーは部分矯正が中心となるため、費用や治療期間を比較的抑えやすい傾向があります。
※症例やクリニックによって異なりますので、事前に確認が必要です。
金属アレルギーのリスクがない
アソアライナーのメリットとして、金属アレルギーリスクがないことも挙げられます。アソアライナーでは、樹脂製のマウスピースを使用します。金属を使わないため、金属アレルギーのリスクがありません。金属アレルギーが気になる方にも選ばれやすい治療法といえるでしょう。
アソアライナーのデメリット・リスク・注意点
アソアライナーは多くのメリットがある一方で、治療を検討する際に知っておきたい注意点やリスクも存在します。主なポイントをまとめましたのでご覧ください。
対応できない症例がある
アソアライナーは主に軽度から中等度の歯列不正に対応しています。重度の歯並びの乱れや、抜歯が必要なケース、奥歯の大きな移動が必要な場合などは、適応できないことがあります。その場合、ワイヤー矯正などと組み合わせることもあるので、歯科医師と相談しながら検討することが大切です。
自己管理が求められる
アソアライナーに限らず、マウスピース矯正では患者さんによる自己管理が重要です。
アソアライナーでは、毎日決められた装着時間(1日17~20時間が目安)を守ることが、治療をスムーズに進める上で大切です。装着時間が短いと十分な治療効果が得られにくく、治療期間が延びることもあります。
治療期間が延びることがある
患者さんの装着状況や口腔内の状態、ライフスタイルによっては、当初の計画よりも治療期間が長引く場合があります。また、マウスピースの紛失や破損などによる再作製が必要になると、その分治療期間が延びることも考えられます。
複数回の歯型採取がある
従来のアソアライナーでは、歯の動きに合わせて1ステップごとに歯型を採取し、マウスピースを作製する方式が取られていました。そのため、細やかな調整ができる一方で、何度も歯型採取を行う必要があり、負担に感じる方もいました。
しかし現在は「アソアライナーデジタル」の導入により、1回の歯型採取で1ステップ・3ステップ・5ステップなど複数回分のマウスピースをまとめて発注できるようになっています。これにより、従来と比べて歯型採取の回数や通院頻度をライフスタイルに合わせて調整しやすくなっています。
アソアライナーの費用
アソアライナー治療を検討する際、費用面は多くの方が気になるポイントです。ここでは、一般的な費用の目安や支払い方法、医療費控除について解説します。
費用の目安と相場
アソアライナーの費用は、部分矯正か全体矯正か、治療範囲や症例によって大きく異なります。一般的には10万~40万円程度が目安です。ただし、アソアライナーとともに虫歯・歯周病治療をする、ワイヤー矯正と組み合わせるなど、治療内容によってはこれより高額になる場合もあります。
また、追加のマウスピース作製や再診料、カウンセリング料などが発生することもあります。そのため、事前に見積もりや料金体系をクリニックで確認しておくと安心です。
支払い方法・医療費控除について
アソアライナーの費用は、現金以外にもクレジットカード払いや医療ローンなど、さまざまな支払い方法が用意されているクリニックが多いです。ただし、利用できる支払い方法は歯科医院によって異なるため、事前に確認しましょう。
また、アソアライナーを含むマウスピース矯正は、「かみ合わせや発音などの機能改善を目的とした治療」であれば医療費控除の対象となる場合があります。一方、見た目だけを目的とした審美矯正は、医療費控除の対象外となります。詳細や適用可否については、お住まいの地域の税務署や税理士に相談するのがおすすめです。
アソアライナーの期間・通院頻度
アソアライナー矯正の治療期間や通院ペースは、歯並びの状態や治療内容によって異なります。ここでは、一般的な目安についてご説明します。
全体の治療期間
アソアライナーの治療期間は、およそ4カ月~1年半が目安です。主に軽度から中等度の歯並びの乱れを対象とする場合が多いため、インビザラインなどよりも短期間で済む傾向にあります。
ただし、治療期間は、歯並びの状態や目標、治療計画によって変わります。必ず歯科医師に確認しましょう。
通院頻度
アソアライナーは、治療の進め方によって通院回数が変わります。
例えば、1ステップごとの治療プランを選んだ場合、およそ1カ月ごとに歯型を採取し、2週間ごとにマウスピースを交換する流れとなるため、通院回数が比較的多くなります。
しかし、「アソアライナーデジタル」により3ステップや5ステップごとにまとめてマウスピースを発注すれば、通院回数を減らせます。ライフスタイルや希望に合わせ、歯科医師と相談しながら決定しましょう。
アソアライナーに向いている人・向いていない人
アソアライナーにはさまざまなメリットやデメリットがあります。ここでは、それらを踏まえて、アソアライナーが向いている人・向いていない人の特徴をまとめます。
向いている人
・軽度~中等度の歯並びの乱れが気になる人
・矯正装置をできるだけ目立たせたくない人
・普段どおりに食事や歯磨きをしたい人
・決められた装着時間を自己管理できる人
・細かく調整しながら矯正を進めたい人
・金属アレルギーが心配な人
アソアライナーは、見た目や生活のしやすさを重視しつつ、軽度~中等度の歯並びを整えたい方に選ばれやすい治療法です。
向いていない人
・重度の歯並びの乱れがある人
・抜歯が必要な人
・自己管理が苦手な人
・着脱やマウスピースのケアに手間をかけたくない人
全体的な矯正や複雑な治療が必要な場合は、アソアライナー以外の矯正方法が提案されることもあります。治療方法は歯科医師と相談して決めましょう。
アソアライナーの治療の流れ
アソアライナーでは、1回の歯型採取で1ステップ・3ステップ・5ステップから選ぶことができ、患者さんの通院ペースや希望に合わせた治療が可能です。ここでは、1ステップごとの基本的な流れを紹介します。
STEP.1 診察・相談
お口の状態や悩みを確認し、治療方法や期間、費用の目安について説明します。
STEP.2 検査
レントゲン撮影や口腔内写真、歯型採取などを行い、現状を詳しく調べます。
STEP.3 診断
検査結果をもとに診断を行い、アソアライナー治療が適応かどうかを判断します。
STEP.4 検査結果の説明
検査結果や治療計画、期間・費用などを説明し、ほかの治療法が適している場合はその提案も行います。
STEP.5 術前治療
必要に応じて虫歯や歯周病などの治療を済ませておきます。
STEP.6 トレーの製作
歯科技工所でオーダーメイドのマウスピースを製作します。
STEP.7 初回トレー装着(動的期間)
マウスピースの装着を開始。1日20時間以上の装着を基本とし、取り外しやケア方法の説明も受けます。
STEP.8 通院
およそ2週間ごとに通院し、新しいマウスピースへの交換や歯の動きの確認、クリーニングを行います。
STEP.9 保定装置装着(保定期間)
矯正終了後は歯並びを安定させるため、一定期間リテーナー(保定装置)を装着します。
STEP.10 メンテナンス
治療後も定期的に歯科医院でクリーニングやチェックを受け、歯並びと口腔内の健康維持を図ります。
アソアライナー治療中の生活と注意点
アソアライナー治療中は、普段の生活を大きく変えずに矯正を進めることができますが、いくつか守るべきポイントがあります。
装着時間をしっかり守る
マウスピースは、1日17~20時間の装着が推奨されています。決められた時間より短くなると、治療計画どおりに歯が動きにくくなり、治療期間が延びてしまうことがあります。装着し忘れなどがないように気を付けましょう。
食後のセルフケアをしっかり行う
アソアライナーは、マウスピースを外せるため、快適に食事できます。しかし、再装着する前に必ず歯磨きやうがいをして、口腔内やマウスピースを清潔に保つことが大切です。食べかすや汚れが残ったまま装着すると、虫歯や歯周病、マウスピースの着色・劣化につながることがあります。
決めたステップに合わせて受診する
アソアライナーでは、治療プランに応じて、決められたタイミングで歯科医院を受診しましょう。定期的な通院では、歯の動きやマウスピースの状態を確認し、必要に応じて調整や新しいマウスピースの受け取りを行います。
疑問は早めに相談する
装着時の違和感やトラブル、気になることがあれば、早めに歯科医院に相談することが大切です。放置すると治療計画に影響が出る場合もあるため、遠慮せず相談しましょう。
まとめ
今回は、アソアライナーの特徴やインビザラインとの違い、メリット・デメリット、治療の流れや日常生活での注意点について解説しました。
アソアライナーは、目立ちにくく取り外しができる日本製のマウスピース型矯正装置であり、軽度~中等度の歯並びの乱れに対応しやすい治療法です。比較的リーズナブルで、硬さの異なる3つのマウスピースを使い分ける、複数回の歯型採取があるなどの独自性があります。
その一方で、対応できる症例の範囲や自己管理の必要性など、知っておきたい注意点もあります。
ご自身の歯並びやライフスタイル、治療に対する希望に合った矯正方法を選ぶためには、メリット・デメリットを正しく理解し、歯科医師とよく相談することが大切です。この記事がアソアライナーを検討されている方の参考になれば幸いです。