「歯並びが悪いのが気になる」「子どもの歯がガタガタしてきた…」そんな悩みを感じていませんか? 歯並びが悪いと、見た目の印象に影響するだけでなく、虫歯や歯周病のリスク、かみ合わせによる体の不調など、健康面にも深く関わってきます。
最近では、顎の発達や生活習慣の変化により、歯並びが悪くなる子どもや若い方が増えているといわれています。「放っておいて大丈夫?」「きれいにしたいけどどうすればいいの?」とお思いの方も多いのではないでしょうか。
今回は、歯並びが悪い原因や代表的な乱れた歯列の種類、放置した場合のリスク、そして改善方法や治療によるメリットまでを分かりやすく解説します。
歯並びが悪い状態とは?代表的な8つの歯並びのタイプ
「悪い歯並びってどういうもの?」と疑問をお持ちの方もいることでしょう。ここでは、代表的な8つの悪い歯並びをご紹介します。
出っ歯
上の前歯や上顎が前に出ている状態です。
遺伝的な要因のほか、指しゃぶりや口呼吸の習慣によって前歯が押し出されることでも起こります。口を閉じにくく、前歯で食べ物をかみ切るのが難しいと感じる場合があります。
受け口
下の前歯や下顎が前に出て、上下のかみ合わせが通常とは逆になっている状態です。
骨格的な要因によることが多く、発音への影響や咀嚼効率の低下につながる場合があります。
開咬
奥歯はかみ合っているのに、前歯の上下に隙間ができている状態です。
舌を前に押し出す癖(舌癖)や、指しゃぶりの習慣が関係することがあります。前歯で麺類や野菜をかみ切りにくくなることがあります。
過蓋咬合
上の前歯が下の前歯を深く覆い隠してしまう状態です。
歯茎や下の前歯に過度な力がかかるため、歯茎が傷ついたり、歯がすり減ったりすることがあります。
叢生
歯が並ぶスペースが不足し、歯が重なったりねじれたりしている状態です。
歯が重なり合うと磨き残しが生じやすく、虫歯や歯周病のリスクが高まります。実は「八重歯」も叢生の一種です。
空隙歯列
歯と歯の間に隙間がある、いわゆる「すきっ歯」の状態です。
顎の大きさに対して歯が小さい場合や、歯の本数が少ない場合に起こります。前歯に隙間があると発音への影響や見た目のコンプレックスにつながる原因になることもあります。
交叉咬合
上下の歯の一部が横にずれて、交差するようにかみ合っている状態です。
片側だけでかむ癖などが関係することがあり、顎の成長や顔の左右バランスに影響する場合があります。
左右非対称
上下の歯列や顎の中心が、顔の中心線に対してずれている状態です。
骨格的な要因や、片側での咀嚼習慣が原因となることがあります。かみ合わせが偏るため、咀嚼のバランスが崩れたり、見た目の印象に影響したりすることがあります。
歯並びが悪くなる主な原因
歯並びが悪くなってしまう背景には、いくつかの要因があります。先天的なものとともに、後天的な習慣や生活環境によるものが複合的に重なって歯並びに影響することも少なくありません。ここでは、歯並びが悪くなる代表的な原因をご紹介します。
遺伝
歯並びは「親に似る」といわれることがあります。とはいえ実際には、歯並びそのものが遺伝することはありません。しかし、顎の大きさや形、歯の大きさや本数は遺伝することがあり、その結果として歯並びが悪くなることはあります。
例えば、顎が小さいのに歯が大きい場合は、歯が並ぶスペースが足りず「叢生(ガタガタの歯並び)」につながります。逆に、顎が大きく歯が小さいと「すきっ歯」になりやすい傾向があります。遺伝そのものを防ぐことはできませんが、早期に観察することで予防的な対応がとれる場合もあります。
指しゃぶり・舌癖などの習慣
小児期のお口まわりの癖が、歯並びを悪くする原因となることがあります。
例えば、指しゃぶりや爪をかむ、また舌で前歯を押す「舌癖」などは、歯や顎に直接的な力を加えるお口まわりの悪癖です。こうした癖が長期間続くと、前歯が前方に押し出されて「出っ歯」や「開咬」になったり、かみ合わせのバランスが崩れたりすることがあります。
こうした癖は無意識に行ってしまうことが多いため、保護者が気づいてあげることが大切です。
口呼吸や姿勢の悪さ
呼吸の仕方や姿勢も、歯並びが悪くなる原因になり得ます。
鼻呼吸ではなく口呼吸が習慣化していると、舌が正しい位置(上顎の内側)に収まらず、顎の成長や歯の並びに悪い影響を及ぼします。
また、頬杖をつく・うつ伏せ寝をする・猫背で長時間過ごすといった姿勢もよくありません。顎の発育や歯列に不均衡な力をかける原因になるためです。
呼吸や姿勢の悪さが長期間続くことが、気づかないうちに歯並びに影響しているのです。
乳歯の早期喪失・虫歯治療の影響
実は、乳歯の状態も歯並びを悪くする要因になることがあります。
乳歯は「永久歯が正しく生えるための位置を案内する役割(スペースキーパー)」を持っている歯です。乳歯を虫歯や外傷で早く失うと、空いたスペースに隣の歯が倒れ込んできてしまい、本来の位置に永久歯が生えることが難しくなります。その結果、歯並びの乱れやかみ合わせの不調につながることがあります。
将来の歯並びに影響してしまうことは、小児期の虫歯予防が大切とされる理由の一つです。
生活習慣や成長環境
歯並びを悪くする原因として、生活習慣や成長環境も挙げられます。
現代の食生活は、柔らかい食べ物が中心になりやすく、しっかりかむ習慣が減っています。その結果、顎の骨が十分に発達せず、歯が並ぶスペースが不足してしまうことがあるのです。また、運動不足や口のまわりの筋力低下も、かむ力や口の使い方に影響を与えます。
こうした生活習慣や成長環境は一見歯並びと関係なさそうに見えますが、実は大きく関わっているのです。
歯並びが悪い子どもが増えている?
近年、「子どもの歯並びが乱れてきている」と感じている保護者が増えているようです。実際に、顎の発達や生活習慣の変化によって、以前よりも歯並びに問題を抱えるお子さんが多くなっているといわれています。その背景には次のような要因があります。
現代の子どもに多い「顎の発達不足」
顎の発達不足は、子どもの歯並びが悪くなる大きな要因です。
現代の子どもは昔の子どもと比べると、顎が発達しにくく小さくなっているといわれます。
これは、かむ回数の減少や、柔らかい食事の普及が影響していると考えられます。顎の骨が十分に発育しないと、スペースが足りないにもかかわらず、永久歯が無理に生えてきてしまいます。その結果、叢生(ガタガタの歯並び)や出っ歯などの不正咬合につながってしまうのです。
食生活(柔らかい食事)の影響
食生活の影響は、子どもの歯並びが悪くなる原因として見逃せません。
先ほどもお伝えしたように、ハンバーグやパン、麺類など、現代の食事は柔らかくかみやすいものが中心になりがちです。しっかりかむ習慣が減ると、顎の骨や口まわりの筋肉が鍛えられず、結果的に歯並びに影響を及ぼします。
「硬い食べ物をよくかむこと」が顎の発育、そして将来の整った歯並びにとって大切です。
お口の悪い癖の影響
お口まわりの悪い癖は、歯並びを悪くさせる大きな要因です。
指しゃぶりや舌で前歯を押す癖(舌癖)、口呼吸といった習慣も、子どもの歯並びに大きく関係します。こうした悪習癖は歯や顎に偏った力を加え続けます。そのため、出っ歯・開咬・受け口などを引き起こす要因となることがあるのです。
幼児期からの生活習慣を正して癖を改善していくことが、歯並びを守るために重要です。
早期発見・早期対応が重要
ここまで解説してきたように、子どもの歯並びはさまざまな要因から悪くなる可能性があります。そのため、早期発見・早期対応の意識を持つことがとても大切です。
子どもの歯並びは成長とともに変化していきます。食事や生活習慣の乱れ、お口の悪い癖などがあると、歯並びが悪くなる可能性が高まります。お子さんの歯並びで、もし気になることがあれば、できるだけ早い段階で歯科医院に相談することをおすすめします。
特に小児期は顎の成長を利用できるため、比較的スムーズかつ少ない負担で歯並びやかみ合わせの改善を行えます。定期的な歯科検診や専門的なチェックを受け、予防や早期対応を行いましょう。
歯並びが悪いことによるリスクとは?
歯並びの乱れは、単に見た目の問題だけにとどまりません。放置することで口腔内の健康や全身にも影響することがあります。ここでは、歯並びが悪いことによる具体的なリスクをご紹介します。
見た目・印象のコンプレックス
歯並びは笑顔や表情に直結するため、他人からの印象を左右します。歯並びが気になって笑うのをためらう、人前で話すときに自信を持てなくなる、といった方もいます。こうした心理的なストレスが、対人関係や自己表現に影響することもあります。
虫歯・歯周病になりやすい
歯が重なり合っていると歯ブラシが届きにくく、隙間が大きいと汚れがたまりやすくなります。その結果、磨き残しが増えてプラークや歯石が付きやすくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まってしまうのです。歯並びは「清掃のしやすさ」に直結する要素といえます。
発音や滑舌への影響
上下の歯の位置や隙間は、舌の動きや空気の流れに影響を与えるものです。歯並びが悪いと、例えば「さ行」「た行」がはっきり発音しにくくなることがあります。特にすきっ歯や開咬では発音の不明瞭さが目立ちやすいとされます。歯並びが悪いと、会話や発表などで不便を感じやすくなるといえるでしょう。
咀嚼・消化機能の低下
かみ合わせが不十分だと、食べ物を細かく砕きにくくなります。咀嚼が不十分だと胃や腸への負担につながり、消化の効率を下げる原因になります。これは、お口だけでなく全身の健康に関係する問題です。また、しっかりかめないと食事の満足感が減ってしまう点も問題です。
顎関節症・肩こり・頭痛の原因になることも
歯並びやかみ合わせの不調は、顎に負担をかける要因になるものです。
顎に負担がかかり続けると、「顎が鳴る」「口を開けづらい」「痛みがある」といった顎関節症の症状が見られるようになります。さらに、かむ筋肉の緊張が首や肩に広がり、肩こりや頭痛を引き起こす要因になる場合もあります。
悪い歯並びを改善するメリット
悪い歯並びを整えることは、見た目をよくするだけでなく、毎日の生活や将来の健康に関わるさまざまなメリットがあります。ここでは代表的なポイントを解説していきます。
見た目が整い自信がつく
悪い歯並びを改善すれば、口元の見た目が整い自信がつきます。
歯並びは、笑顔や話すときの印象を大きく左右するものです。「歯並びが悪く、会話の際に口元を手で隠してしまう」そういった経験を持っている方もいるかもしれません。
歯並びが整えば口元の見た目は気にならなくなります。会話中に口元を隠すことはなくなりますし、自信を持って歯を出して笑顔になれるようになります。
「歯並びの悪さ」というコンプレックスが軽減されることは、日常生活や人間関係においてもプラスの要素になることでしょう。
清掃性が高まり虫歯・歯周病予防に
虫歯・歯周病予防につながることも、悪い歯並びを整えるメリットです。
歯が重なっている部分や隙間が広い部分は、歯ブラシやフロスが届きにくく汚れが残りやすくなります。そのため、虫歯や歯周病といったお口のトラブルを引き起こしやすくなります。
しかし歯科矯正によって歯並びが整えば、清掃性が向上して口腔内を清潔に保ちやすくなります。そのため、虫歯や歯周病の予防につながりやすい環境が整います。長期的に見れば、歯の寿命を延ばして快適な日常を守ることにもつながることでしょう。
かみ合わせ改善による健康向上
悪い歯並びを改善することは、健康な生活を送る上でも重要です。
かみ合わせは、単に食事をするだけでなく、顎の関節や顔全体の筋肉の使い方にも関係します。悪い歯並びを改善して正しいかみ合わせにしていけば、食べ物を効率よくかめるようになり、消化器官への負担軽減にもつながります。また、偏ったかみ方が減ることで、顎や筋肉への過度な負担が減り、肩こりや頭痛など全身の不調が和らぐ場合もあります。
子どもの成長によい影響を与える
子どもが悪い歯並びを整えることは、将来の健やかな成長につながります。
小児矯正は、治療を通して顎の発育をサポートし、食べ物をしっかりかむ習慣や正しい発音を身に付けさせる治療です。また、早い段階で矯正を始めることで、大人になってからの口腔トラブルを減らせる可能性もあります。
このように、子どもの場合も将来の健康や生活の質を考える上で、歯並びは重要なポイントであるといえます。
悪い歯並びを整える方法
歯並びを改善するための歯科矯正の方法にはいくつか種類があります。年齢や歯並びの状態、ライフスタイルによって適した方法は異なります。ここでは代表的な歯科矯正方法をご紹介します。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は歯科矯正の中でももっともスタンダードな方法です。歯に小さな装置(ブラケット)を取り付け、そこにワイヤーを通して歯を少しずつ移動させます。
ワイヤー矯正には以下のような種類があります。
・表側矯正:歯の表面に装置を取り付けるため目立ちやすい。その一方で、多くの歯科医院で取り扱っていて安定した効果が期待できる。
・裏側矯正(舌側矯正):歯の裏側に装置を取り付けるため外から装置が見えにくい。その反面、慣れるまで発音や食事に影響することがある。
・ハーフリンガル:目立つ上の歯は裏側矯正、目立ちにくい下の歯は表側矯正で対応する方法。裏側矯正に比べて費用を抑えやすい。
ワイヤー矯正は重度の歯並びの乱れにも対応できるため、悪い歯並びでもしっかり歯を動かしたい方や幅広い症例に適した治療を検討している方に向いています。
マウスピース矯正
マウスピース矯正とは、透明なマウスピースを装着して歯を段階的に動かす方法です。数週間ごとにマウスピースを交換して少しずつ歯を移動させます。
マウスピース矯正に使われる素材は透明であり、見た目が目立ちにくいのが特徴です。また、食事や歯みがきのときに取り外せるため、普段どおりに生活しやすいのが大きなメリットです。
しかし、マウスピース矯正は1日20時間以上の装着が必要です。装着時間を守らなければ効果が出にくくなります。また、ワイヤー矯正に比べて適応症例が限られていることがほとんどで、歯並びの状態によっては対応できない場合もあります。
目立ちにくさや清掃のしやすさを重視する方、自己管理をしっかりできる方に適しています。
小児矯正
小児矯正は成長期の子どもの顎の発育を利用して行う矯正方法です。
取り外し式の「拡大床」で顎の幅を広げたり、「機能的矯正装置」で筋肉や骨格のバランスを整えたりと、大人の矯正とは異なるアプローチを行います。
小児矯正は、適切なタイミングで行うことで将来の永久歯がきれいに並ぶスペースを確保できます。ただし、装置の装着や通院管理、保護者の協力が欠かせません。
お子さんの将来の歯並びが心配な方や、顎の発育を利用した矯正を早めに始めたい方に向いています。
その他
歯科矯正には、全体矯正だけでなく一部の歯を対象とした方法もあります。
前歯だけを動かす「部分矯正」は、比較的短期間で見た目を整えられるのが特徴です。ただし、対応できる範囲が限られるため、症例によっては適さない場合があります。治療期間を短くしたい、費用を抑えたい、気になるところだけ改善したいという方に向いています。
「補綴治療」は、ブリッジやクラウン、セラミックなどによって、歯の審美性を高める治療です。主に歯列矯正が完了した後に、歯をさらに美しく整えるために行います。
まとめ
今回は、歯並びが悪くなる原因と改善方法について解説しました。
歯並びが悪くなる原因は、遺伝や生活習慣、子どもの顎の発達不足など、さまざまあります。また、柔らかい食事やお口の癖、口呼吸といった要因から、歯並びに問題を抱える子どもも増えているといわれます。
歯並びが悪い状態は、見た目だけでなく、虫歯や歯周病のリスク、咀嚼や発音への影響、さらには全身の不調にもつながるものです。そのため、歯並びの乱れが気になるようなら、改善を検討することをおすすめします。
矯正方法にはワイヤー矯正、マウスピース矯正、小児矯正、部分矯正や補綴治療など多様な選択肢があります。それぞれに特徴や適したケースがありますので、年齢やライフスタイル、歯の状態によって自分に合ったものを選びましょう。