歯科矯正にはさまざまな種類があり、年齢や症例によって選ぶべき方法が異なります。「マウスピース矯正」や「裏側矯正」など、目立ちにくい装置もあり、見た目を気にせず矯正歯科治療を始めやすくなっています。
その一方で「どの矯正法が自分や子どもに合っているの?」「費用や治療期間はどれくらい?」「医院選びで失敗したくない」と悩む方も少なくありません。また、「大人と子どもで矯正の目的は違うって本当?」「早く始めた方がいいケースって?」など、年齢による違いが気になる方もいらっしゃるでしょう。
今回は、大人・子どもそれぞれの歯科矯正の種類や特徴、費用相場、医院選びのポイントをわかりやすく解説します。
大人の歯科矯正の種類
「矯正は子どものもの」とイメージする方もいるかもしれませんが、矯正歯科治療は大人になってからでも始められます。最近では見た目が気になりにくい装置やライフスタイルに合わせた矯正方法もあり、社会人になってから矯正を始める方も少なくありません。
しかし一口に矯正といっても、装置の種類によって特徴は大きく異なります。ここでは矯正装置として代表的な「表側矯正」「裏側矯正」「ハーフリンガル矯正」「マウスピース矯正」について、それぞれの仕組みや特徴を解説します。
表側矯正
表側矯正は、歯の表面にブラケットを取り付け、ワイヤーで少しずつ歯を動かしていく方法です。もっとも一般的に行われている矯正方法であり、長年にわたって多くの症例で用いられてきました。
歯の動きをコントロールしやすく、軽度から重度まで幅広い歯並びに対応できるのが特徴です。スタンダードな方法であり、多くの歯科医院で取り扱われている点も選びやすさのポイントといえるでしょう。歯の細かい移動や噛み合わせの改善にも適している点も大きなメリットといえます。
一方で、装置が表側につくため目立ちやすく、人前に出る機会の多い方は気になる場合があります。ただし、白や透明素材のブラケットを選べば、表側矯正でも目立ちにくくすることができます。また、食事中に食べ物が装置に挟まりやすく、歯磨きに手間がかかるため、虫歯・歯周病のリスクに注意しなければなりません。
裏側矯正
裏側矯正は、歯の裏側(舌側)にブラケットとワイヤーを装着して歯を動かしていく方法です。対応症例や歯を動かす仕組みについては、表側矯正とほぼ同等とされています。表側矯正との違いとしては、正面からは装置が見えにくく矯正中でも周囲に気づかれにくい点です。そのため、見た目を重視する方に選ばれることもあります。
ただし、裏側矯正は舌に近い位置に装置があるため発音がしにくかったり、舌に違和感を覚えたりすることがあります。さらに表側矯正と同じように装置に汚れが溜まりやすい、ブラッシングしにくいといった課題があります。そのため、虫歯や歯周病を予防するためには丁寧なケアが欠かせません。
ハーフリンガル矯正
ハーフリンガル矯正は、上の歯には裏側矯正、下の歯には表側矯正を組み合わせる方法です。笑ったときに目立ちやすい上の歯を裏側にすることで、見た目の負担を軽減できるのが特徴です。一方で、下の歯は表側に装置をつけるため、裏側矯正のみよりも発音や舌の違和感が少なく、会話をしやすい傾向にあります。
ただし、上下で異なる装置を使用するため、両方の装置の注意点も併せ持ちます。たとえば、表側部分は目立ちにくい下の歯とはいえ、やはり見た目を気にされる方もいるでしょう。裏側部分は上の歯に取り付けるので、一部の発音に影響が出てしまうかもしれません。また、表側矯正・裏側矯正と同じく取り外せない装置なので、虫歯・歯周病予防のために丁寧なケアと定期的なチェックが欠かせません。
マウスピース矯正
マウスピース矯正は、透明なマウスピース型の装置を一定期間ごとに交換しながら歯を少しずつ動かしていく方法です。装置が透明で目立ちにくいため、矯正中でも周囲に気づかれにくいのが大きな特徴です。また、取り外しが可能なため、食事や歯磨きの際に装置を外して普段通りに行えます。装置に汚れが溜まることがなく、適切にケアできることからワイヤー矯正装置に比べて虫歯・歯周病リスクを抑えやすいです。たとえば、普段通りのブラッシングはもちろん、フロスなども問題なく使えます。
一方で、マウスピース矯正は1日の装着時間を守らなければなりません。装着時間が不十分だと歯が予定通りに動かないため、自己管理が求められます。また、取り外しができることは快適性や利便性の向上にもつながるものの、紛失などのリスクも高まる点には注意が必要です。さらに、歯の状態によってはマウスピース単独では対応が難しく、ワイヤー矯正など他の方法を併用することもあります。
大人の歯科矯正の種類の選び方
解説したように、矯正装置にはいくつかの種類があり、それぞれに特徴や注意点があります。どの装置を選ぶかによって、矯正中の見た目や日常生活での過ごしやすさ、費用や通院の負担などが大きく変わってきます。
大人の矯正においては、「目立ちにくさ」や「仕事・生活への影響」などが選ぶ際の重要なポイントです。ここでは、大人の歯科矯正の種類をどのように選ぶべきか、その考え方を解説します。
装置の見た目
歯科矯正装置の種類を選ぶうえで「装置の見え方」は重要なポイントです。
たとえば、表側矯正はもっともスタンダードな方法ですが、ブラケットやワイヤーが正面から見えるため、目立ちやすい傾向があります。一方、裏側矯正は歯の裏側に装置をつけるため、正面からはほとんど見えません。
また、表側矯正でも白や透明のブラケットを選べば、金属のブラケットよりも目立ちにくく自然な見た目になります。
さらに、透明な素材を使用するマウスピース矯正であれば、装着中でも周囲に気づかれにくくなります。そのため、ストレスもそれほど感じずに矯正を進めやすいでしょう。
このように、矯正装置の種類によって見た目の印象は大きく変わります。人前に出る機会が多い方や職業上の都合で目立たせたくない方は、装置の審美性も一つの選ぶ基準になるでしょう。
痛みや違和感
矯正装置を選ぶ際には、治療中の痛みや違和感も考えておきたいポイントです。
前提として、矯正歯科治療は歯を動かすことから、どの装置でもある程度の圧迫感や痛みを伴う可能性があります。しかし、装置の位置や形によって違和感の出方は異なります。たとえば、表側矯正は唇や頬に当たりやすく、裏側矯正は舌に近いため発音や舌の動きに影響が出ることがあります。さらに、これらワイヤー矯正は、歯を大きく動かせることから、痛み・違和感が出やすい傾向にあることも覚えておきましょう。
一方、マウスピース矯正はやわらかく滑らかな素材で作られていてじっくり歯を動かすことから、痛み・違和感が少ない傾向にあります。しかし、長時間の装着が必要な点に注意が必要です。
ワイヤーかマウスピースか
「ワイヤー矯正」と「マウスピース矯正」どちらを選ぶかも大きなポイントです。
表側・裏側などのワイヤー矯正は、ブラケットとワイヤーにより歯を動かします。細かい調整や大きな歯の移動を得意とし、対応症例が幅広いのが特徴です。一方で、装置が固定式のため清掃が難しく、見た目や違和感が気になる場合もあります。
マウスピース矯正は、透明なマウスピースを一定期間ごとに交換しながら歯を動かしていく方法です。装置が目立ちにくく取り外しもできるため、食事やブラッシングも普段通りに行えます。ただし、適応症例には限りがある点や、自己管理を怠ると計画通りに進まないこともある点に注意が必要です。
どちらにも長所と短所があるため、歯並びの状態や生活習慣を踏まえて、歯科医師と相談しながら自分に合った方法を検討しましょう。
適応症例
矯正装置の種類を選ぶ際は、見た目や利便性だけでなく「どんな症例に対応できるか」という点も大切です。
ワイヤー矯正(表側・裏側)は、歯の位置や噛み合わせを幅広くコントロールできるため、軽度から重度までさまざまな歯並びに用いられます。細かい歯の移動や複雑な症例にも対応しやすいのが特徴です。
一方、マウスピース矯正は透明で取り外し可能という利点があるものの、対応できる症例は比較的限られていることがほとんどです。マウスピース矯正の種類にもよりますが、一般的には軽度~中等度の歯並びの乱れに対応し、重度の不正咬合や大きな歯の移動は対応が難しくなります。重度の場合は、別の矯正方法やワイヤー矯正との併用が検討されることもあります。
このように、矯正装置の選択は歯並びの状態によっても変わってきます。自分の症例がどの方法に合うのかを知るためには、カウンセリングで診断を受けることが重要です。
費用相場
歯科矯正は一部例外を除いて、基本的に自由診療です。そのため費用は装置の種類や医院ごとに異なります。
おおまかな目安としては、スタンダードな表側矯正は費用を抑えやすく、裏側矯正やハーフリンガル矯正は技術的な難しさや装置の特性から費用が高くなる傾向にあります。マウスピース矯正については、使用するメーカーや症例の難易度によって幅があり、部分矯正か全体矯正かによっても大きく変わります。
いずれの方法を選ぶ場合も、総額は数十万円から百万円を超えることもあるため、治療を始める前に費用の内訳をしっかり確認しておくことが大切です。また、調整料や保定装置(リテーナー)の費用が別途かかる場合もあるため、見積もりの段階でトータルの金額を把握しておくと安心です。
治療期間
歯科矯正は、どの装置の種類であっても年単位で取り組むことがほとんどです。ただし実際の治療期間は、症例によって大きく変わります。一般的には、部分矯正のように動かす歯が限られている場合は比較的短く、全体矯正では長期になる傾向があります。
歯科矯正の治療期間は、装置の種類によって極端に差が出るわけではありません。ただ傾向として、ワイヤー矯正は歯の移動を幅広くコントロールできるため複雑な症例に対応しやすく、結果として時間を要する場合があります。一方、マウスピース矯正は取り外しが可能で日常生活に取り入れやすい反面、装着時間が不足すると計画通りに進まず、治療期間が延びてしまうこともあります。
治療期間は個々の歯並びや治療計画によって異なるため、事前のカウンセリングで歯科医師に確認しておきましょう。
歯科医師の実力
矯正歯科治療は同じ装置を使っていても、歯科医師の知識や経験によって結果や満足度が大きく変わります。特に大人の矯正は、噛み合わせや歯周組織の状態など考慮すべき点が多く、より高度な診断と治療計画が求められます。
歯科医師を選ぶ際には、矯正歯科を専門にしているかどうか、これまでの経験や取り扱い装置の種類、カウンセリングでの説明の丁寧さなどを確認しておくと安心です。複数の装置や治療法を提示してくれる医院であれば、自分に合った方法を比較・検討しやすいでしょう。
また、矯正は長期にわたる治療のため、通院時に相談しやすい雰囲気かどうかも大切です。信頼できる歯科医師のもとで治療を進めることが、安心して矯正を続けるための大きな支えになります。
子どもの歯科矯正の種類
子どもの歯並びや噛み合わせの矯正は、大人と違って成長を利用して進めるのが特徴です。そのため、成長段階に応じた装置が多く用いられます。装置の種類によって目的や仕組みが異なり、永久歯がきれいに並ぶためのスペースを確保したり、噛み合わせの不調和を改善したりできます。ここでは、代表的な子どもの矯正装置の種類について解説します。
拡大床
拡大床(かくだいしょう)は、歯列のアーチを少しずつ広げていく取り外し式の装置です。主に乳歯と永久歯が混在する時期に使われ、永久歯がきれいに並ぶためのスペースを確保する目的で用いられます。
装置の中央にはねじ(スクリュー)があり、決められた頻度で回すことで歯列を広げていきます。これにより、歯の重なりや将来的な歯並びの乱れを予防しやすくなるのが特徴です。
ただし、十分な効果を得るには決められた時間の装着が必要であり、保護者の管理や子ども自身の協力が欠かせません。取り外し式であるため「つけ忘れ」が起こりやすい点にも注意が必要です。
急速拡大装置
急速拡大装置は、上あごの幅を広げる目的で用いられる固定式の装置です。主に上あごが狭い場合に使われ、上下の歯列の幅を整えることを目的としています。
装置の中央にあるスクリューを定期的に回すことで、あごの骨を左右に押し広げていきます。取り外しができないため装着忘れの心配はありませんが、慣れるまでは違和感や発音のしにくさを覚えやすい傾向があります。
成長期に行うことで効果が得やすく、使用できる時期が限られる点も特徴です。歯列だけを広げる拡大床に比べ、より積極的にあごの骨格にアプローチできる方法といえるでしょう。
ムーシールド
ムーシールドは、受け口(反対咬合)の改善を目的としたマウスピース型の装置です。主に3~6歳ごろの乳歯列期に用いられることが多く、就寝時に装着して使用します。
受け口は、下あごの成長が強い、舌や口周りの筋肉の使い方に偏りがある、といったことで起こる場合があります。ムーシールドはこうした筋肉のバランスを整え、下あごの前方への成長を抑えながら、自然な噛み合わせへ誘導することを目的としています。
取り外し式であるため痛みは少なく、子どもにとって受け入れやすい装置といえますが、就寝時にしっかり装着する習慣をつけることが大切です。また、すべての受け口に対応できるわけではないため、使用の可否は歯科医師による診断が欠かせません。
ヘッドギア
ヘッドギアは、主に出っ歯(上顎前突)の改善を目的とした矯正装置です。上あごの歯や骨の成長を抑制したり、奥歯を後方に移動させたりするために使われます。頭や後頭部に固定するバンドと、口腔内の装置をつなぐ構造になっており、自宅で決められた時間装着して使用します。成長期の子どもに用いることで、あごの前後のバランスを整えやすくなるのが特徴です。
ヘッドギアは、上あごの成長をコントロールできる数少ない装置の一つですが、効果を得るには装着時間を守ることが欠かせません。使用にあたっては、保護者のサポートや子ども自身の協力が重要となります。
リンガルアーチ
リンガルアーチは、上あごまたは下あごの奥歯に金属のワイヤーを装着し、それらを歯の裏側でアーチ状のワイヤーにつなぐ固定式の装置です。主に奥歯の位置を安定させたり、歯列の横幅をコントロールしたりする目的で使用されます。
乳歯が早く抜けてしまった場合に、後続の永久歯が正しい位置に生えるためのスペースを確保する「保隙装置」として用いられることもあります。また、奥歯が前方に動いてしまうのを防ぐことで、将来的な歯列の乱れを予防する効果も期待できます。
固定式で取り外しができないため、装着忘れの心配はありませんが、装置が舌に近いため慣れるまでは違和感を覚えることがあります。清掃もしにくくなるため、日常のブラッシングを丁寧に行うことが大切です。
リップバンパー
リップバンパーは、主に下あごに装着する矯正装置で、唇や頬からの圧力をコントロールして歯並びを整えることを目的としています。特に下唇を噛む癖や舌で前歯を押す癖がある場合に、そうした力が歯並びに悪影響を与えるのを防ぐ役割があります。
主な働きは、前歯が後ろに傾くのを防ぎ、奥歯が前方へ動くのを抑えることです。これにより歯列のアーチが広がりやすくなり、永久歯が正しく並ぶためのスペースを確保できます。お口周辺の悪習癖の改善にもつながるため、成長期の子どもの噛み合わせや歯列のコントロールに有効な装置の一つです。
装着時間を守らなければ十分な効果が得られないため、歯科医師の指示に従って使用することが重要です。また、装置の周囲は清掃が難しいため、食べかすが残らないよう丁寧なケアが欠かせません。
バイオネーター
バイオネーターは、成長期の子どもの出っ歯(上顎前突)の改善に使われる取り外し式の矯正装置です。特に下あごの成長が不十分な場合に適しており、下あごを前方へ誘導することで、上下の噛み合わせを整えます。あごの成長が活発なタイミングで使用する装置で、目安としては12歳ごろまでです。装着は睡眠中が中心ですが、日中も2時間程度装着することで効果が高まりやすいとされています。
バイオネーターは食事や歯磨きのときは取り外せるため清潔に保ちやすく、虫歯リスクを抑えやすい傾向にあるのがメリットです。
注意点としては、毎日の装着時間を守らないと効果を得にくい点にあります。また、定期的な通院と調整が必要で、自己判断で使用を中断すると十分な効果が得られません。
マウスピース
子どものマウスピース矯正は、成長段階にあるあごの骨や歯並びを整えられます。透明で取り外し可能な装置を使いながらトレーニングを進め、舌や唇、頬の筋肉にアプローチすることでお口のバランスを整えるのが目的です。
マウスピース矯正はあごの発育を促し、永久歯の生えるスペースを確保する効果が期待できます。見た目も目立ちにくく、食事やブラッシングの際に取り外せるため、衛生的で日常生活への負担も少ないのが特徴です。
マウスピース矯正では、毎日の装着とトレーニングを継続することが重要です。歯科医師の指示に従い、正しく使用しましょう。また、すべての症例に適応できるわけではないため、事前に十分な相談が必要です。
歯科矯正を検討すべき歯並びの種類やポイント

歯並びの乱れにはさまざまな種類があります。いずれの種類も見た目の問題とともに、噛み合わせや口腔機能に影響を及ぼす可能性があります。以下で、代表的な歯並びの種類を挙げます。
・出っ歯(上顎前突):上の前歯や上あごが前に突き出した状態
・受け口(下顎前突・反対咬合):下の歯や下あごが前に出ている状態
・叢生(でこぼこ):歯が並ぶスペースが不足してガタガタに生えている状態
・すきっ歯(空隙歯列):歯と歯の間にすき間がある状態
・開咬:奥歯は噛んでいるのに前歯が噛み合わない状態
・過蓋咬合:上の前歯が下の前歯を深く覆い隠している状態
これらの歯並びは、虫歯や歯周病のリスクを高めたり、発音や咀嚼に影響したりするため、矯正歯科治療を検討しても良いでしょう。
さらに以下では、大人・子どもそれぞれで歯科矯正を検討すべきポイントを解説します。
大人の場合
大人の場合、あごの成長がすでに終わっているため、大人の歯科矯正では歯を動かす治療がメインになります。
歯並びが悪いと「噛みにくい」「顎関節に負担がかかる」「口腔清掃が難しい」といった、機能面での問題を引き起こすこともあるため、見た目だけでなく健康維持の観点からも矯正を検討する価値があります。
子どもの場合
子どものあごやお口周りは成長段階にあります。そのため、子どもの歯科矯正では、あごの骨の発育や歯の生え変わりを利用して治療できるのが特徴です。
あごが未発達な状態の子どもは、指しゃぶりや口呼吸などの悪習慣が原因となる場合もあります。歯並びの不具合や悪習癖がある場合は、早期に対応することで将来の矯正治療を軽くできる可能性があります。歯科医師と相談しながら、その子のお口や成長状態を活かし、適切なタイミングでの治療をスタートすることがポイントです。
子どもの歯科矯正方法は年齢で違いがある
子どもの歯科矯正は、あごや歯の発育段階に応じて「0期」「1期」「2期」に分けられます。それぞれの時期に適した方法を選ぶことで、成長を利用しながら効率的に治療を進められます。
0期治療
0期治療は3歳~5歳ごろの乳歯列期に行います。受け口(下顎前突)や横ずれ(側方偏位)といった症状を早めに改善・予防するのが目的です。
この時期は骨格がやわらかく、あごの成長に大きく影響を与えられるため、ムーシールドやプレオルソなどのマウスピース型の取り外し式装置を使い、主に就寝時に装着して治療を行います。
不正咬合を放置すると、上あごの成長が妨げられたり下あごが曲がって前に出てしまったりするリスクがあります。0期治療で早めに対応することで、あごの骨を正常な方向へ導き、将来の歯並びや噛み合わせを整えやすくする効果が期待できます。
1期治療
1期治療は6歳~12歳ごろの混合歯列期に行う子どもの歯科矯正です。乳歯と永久歯が混ざった時期に、受け口(下顎前突)や出っ歯(上顎前突)、叢生(歯が重なり合う状態)、過蓋咬合、埋伏歯など、さまざまな不正咬合の改善を目指します。
この時期はあごの骨がまだ成長過程にあるため、治療を進めることで噛み合わせや骨格の土台を整えられます。リンガルアーチなどの固定式装置、ヘッドギアといった取り外し可能な装置、またはMFT(口腔筋機能療法)によるトレーニングのみで進める場合もあります。
1期治療では、以下のようなことを意識して取り組みます。
・あごの位置のズレや歯並びを改善し、調和の取れた骨格へ導く
・永久歯がきれいに並ぶようスペースを確保する
・指しゃぶり、口呼吸、舌の突出、くちゃくちゃ噛みなどの悪習慣を改善する
治療目的が達成された段階で一旦終了し、すべての永久歯が生え揃うまで経過観察に入ります。その後、必要に応じて2期治療へ移行します。
2期治療
2期治療は、永久歯が生え揃ってから行う歯科矯正で、12~13歳以降に歯並びやお口の状態をみて行います。治療内容としては、大人の矯正と同じです。表側・裏側のワイヤー矯正装置やマウスピース型矯正装置など、さまざまな種類の装置を用いて、歯を細かくコントロールして最終的な歯並びや噛み合わせを整えます。
矯正の「仕上げ」ともいえる重要なものであり、2期治療は審美性・機能性・安定性を満たすことを目的としています。歯の位置だけでなく、あごの骨の成長や第二大臼歯の萌出までを見極めながら治療を進めるため、将来の噛み合わせの乱れや後戻りを予防することにもつながります。
最適な種類の歯科矯正を受けるための医院選び
歯科矯正には、ワイヤー矯正・マウスピース矯正・子どもの矯正など多くの種類があります。より満足・納得できる結果を得るためには、ご自身やお子さんそれぞれに合った治療法を選ぶことが大切です。ここでは、歯科矯正を受ける歯科医院選びのポイントについて解説します。
歯科医師に知識・技術がある
歯科矯正は見た目だけでなく、噛み合わせやあごの成長まで考える高度な治療です。そのため、担当する歯科医師の知識や技術が結果を大きく左右します。たとえば大人の矯正では歯周病や虫歯の管理、子どもの矯正では成長段階を見極める判断力が必要です。
日本矯正歯科学会の認定医・専門医は専門的な研鑽を積んでいるため、医院選びの目安になります。
設備が整っている
矯正歯科治療では、正確な診断と治療計画が欠かせません。そのためには、デジタルレントゲンや口腔内スキャナー、3Dシミュレーションなどの設備があるかどうかが重要です。さまざまな精密機器を備えている歯科医院であれば、歯の動きや噛み合わせをより精密に把握でき、効率的で安全性の高い治療を実現できます。
歯科医師やスタッフに相談しやすい
矯正歯科治療は数か月から数年単位かかる治療です。そのため、不安や疑問を気軽に相談できる環境も大切です。
治療内容や費用、痛みへの対処などを丁寧に説明してくれる歯科医師やスタッフがいる歯科医院なら、安心して治療を続けられます。信頼できるコミュニケーションは、長期治療を乗り越える大きな支えとなることでしょう。
メリット・デメリットどちらも提示してくれる
ワイヤー矯正・マウスピース矯正・小児矯正など、どの方法にも長所と短所があります。良い点だけを強調するのではなく、デメリットや注意点まできちんと説明してくれる歯科医院ならば信頼・安心できることでしょう。
治療法ごとの違いを公平に提示してもらうことで、自分やお子さんに合った方法を納得して選ぶことができます。
複数の選択肢を提案してくれる
これまでご紹介したように、矯正方法の種類は一つではなく、ワイヤー矯正・マウスピース矯正・部分矯正など、目的やライフスタイルに応じて複数の選択肢があります。最初から特定の方法に限定するのではなく、複数の治療法を提示してくれる歯科医師なら、自分に合った治療を比較検討可能です。
幅広い提案があることで、納得度の高い選択につながります。
通いやすい立地である
矯正歯科治療は長期間にわたって、定期的な通院が必要です。そのため、自宅や学校、職場から通いやすい立地にあるかどうかも重要といえます。
通いやすい立地の歯科医院であれば、予約や通院の負担が少なくなり、治療を中断することなく継続しやすくなります。
無理なく通える環境は、矯正歯科治療を成功させる大切なポイントです。
わかりやすい料金体系である
矯正歯科治療は基本的に自費診療であり、数十万円単位の費用がかかるため、料金の明確さは欠かせません。
装置の種類ごとの基本料金はもちろん、調整料・追加費用の有無までわかりやすく説明してくれる歯科医院なら安心です。カウンセリングや見積もりの段階で全体像を把握できれば、予算を立てやすく、治療中の不安やトラブルも減らせることでしょう。
トラブル時もスムーズに対応してくれる
トラブルがあった際もスムーズに対応してくれる歯科医院なら安心できます。
矯正歯科治療では歯を動かすため、治療中に痛みが強く出ることがあります。また、装置が外れる、破損するといったこともあるかもしれません。そんなとき、臨機応変に対応してくれる体制があるかどうかは重要です。
トラブル時の連絡方法や対応のスピードは、事前に必ず確認しておきましょう。また、治療中の対応はもちろん、治療後の保定やメインテナンスまできちんと整っている歯科医院なら、長期の矯正歯科治療も安心して任せられます。
まとめ
今回は、歯科矯正の種類や大人と子どもの矯正方法、医院選びのポイントについて解説しました。
歯科矯正には、ワイヤー矯正・マウスピース矯正・子どもの成長に合わせた矯正など、幅広い種類があります。それぞれに特徴やメリット・デメリットがあるため、自分やお子さんの症例・ライフスタイルに合った方法を選ぶことが大切です。
また、より満足のいく矯正を受けるためには、矯正の種類とともに医院選びも重要なポイントになります。歯科医師の知識や技術、設備の充実度、相談のしやすさ、治療の選択肢の提示、料金体系のわかりやすさなどを確認しておくことで、安心して治療を進めることができます。
歯科矯正は、見た目の改善だけでなく、噛み合わせや将来の歯の健康にも関わる大切な治療です。本記事を参考に、ご自身やお子さんに合った矯正の種類・歯科医院を選び、納得のいく矯正歯科治療を検討してみてください。